母川回帰
人は年齢と共に変わって行く。あんなに大好きだったピンク色が、ある日突然幼く見えるようになったり、社会人になり、学生時代の大親友と、なんとなく疎遠になってしまったり。情熱を注いできたことが、まるで平凡なものだと、突然感じるようになったり。
月日が経つにつれ、いろいろなものがどんどん色褪せていく一方で、色鮮やかになるものもある。それが私の場合、独り立ちだったのだ。子供たちが、ひょろひょろと飛び立って行った後、誰のためでもなく、自分のために生きていくことが、唯一とても色鮮やかに見えた。
独り立ちなんてものは、実は、どこででも出来ることで、それは、長い間住み慣れたアメリカ西海岸の町でも良かったし、心機一転、誰も知らない土地で始めても良かったのだ。でも、どういう訳か強力な力で引き付けられ、東京へ。母川回帰なのだと思う。太平洋を泳ぎ切り(実際には、カナヅチだけど)、アメリカ大陸に上陸し、東西南北自在に周り、もうすっかり自分の国じゃないかと錯覚していた頃、突然スイッチが入ったのだ。「帰らなくちゃ。生まれたところに帰らなくちゃ。」
という訳で、私は今、生まれ育った東京にいる。27年振りに。